花の心
あなたがくれた優しい言葉。あなたがくれた真っ赤な薔薇。僕がケガをしないようにと、あなたはトゲを折ってくれた。赤のペンキを花に塗った。それがあなたの強さなのだろう。僕なら真っ赤な手を見せて、「これが愛だ」と叫んだに違いない。僕にはそれを受け取れず、水溜まりに落としてしまった。血の池のように、純粋が混濁としていく。僕はそれを飲み干してしまおうと思ったが、罪を隠すことなんてできなかった。振り返って見ると、僕らの通った道に虹が敷かれていた。
随分と雨は止んでいない。鬱陶しくて仕方がないが、結局雨が止んだところで良いことは何もない。雨が降った後の空には虹が架かると言うけれど、僕らの足元に残るのは水溜まりばかりで、たとえ地上に虹が架かったとしても、きっと次第に錆び付いてしまうだろう。
この赤が、この愛が、この優しさが、俄雨に落とされてしまうと思うと恐ろしくて堪らない。あなたの傷が癒える時、あなたは僕を忘れることでしょう。だから僕は受け取れず、優しい花を水に落とす。傷付くことを恐れて愛することを止めるのは身勝手だろうか。甘えだろうか。あなたのその円らな瞳を、僕のこの瞑らない瞳で愛せたらどんなに幸せだろうか。
酸素が無い世界は美しい。僕のいない世界をあなたは望んでいるだろうか。錆びた虹を汚れだと思うのは僕らの我儘だ。僕の意味を諦めるのはまだ早い。虹を砕けば雨が止むと信じて、あなたを愛する心を信じたい。
夢
目の前の景色を
世界と同じ色に染める
暗闇に変わったら
素敵な色で彩ろう
2つの世界の入り口で
今宵も裁きが下される
今日と明日の世界を繋ぐ
弾む心の廃棄場
人々の理想を上映する
独り善がりのムービーシアター
あなたが今日抱いた幸福感は
暗闇の果てを選んだ
「闇の先は光でした」 笑ったって
明日が生きづらくなるだけさ
現実の記憶が
夜の世界に現れて
未完成の僕を告げる
記憶の忘却を阻んだ
1つの世界の入り口で
今宵も裁きが下される
今日と終わりの世界をつなぐ
「明日を知れるだけ幸せじゃないか」
自分の脳内で診断された
無意識レベルの偽カルテ
あなたが今日抱いた罪悪感は
暗闇の果てを選んだ
「闇の先は闇でした」 泣いたって
昨日は何にも救われない
目を開けた その先の世界が
輝いていられるように
「光の先も光だった」って
笑っていられるように
昨日の狭間を掻き消して
今日を繋いでいけばいい
愛の上を歩けるなら
永遠など無いと知りながら
愛を繋いで死んでいく
到底理解できないけど
そうするしかないのだろう
きっと僕も同じだろう
あの頃は夢中だった
目の前の優しさのような
薬のような温かさに
唯一の解決策を見落とす程だった
愛を楽観視できるなら
雨が降ることはなかった
何も知らない大人達の
抗う姿は悲惨だった
君は渡した手紙 すぐに破り捨て
「ごめんなさい」と言うのだろう
そしたら僕は地面の中から
惨めに愛を探すのだろう
「あの頃は」とか言えるほど
大人になっちゃいないけど
また愛を見つけた気になって
子どもに戻ってしまうだろう
恋は楽観視するものだ
真面目でいても悲しいだけだ
何も知らない子どもの僕に
愛を語る資格なんて無かった
恋というものを知らなければ
恋をせずに済むんだろうな
愛というものを知らなければ
誰も生きてはいけないだろうな
愛を楽観視できるなら
きっと僕ではいられなかった
愛を愛せよ 自分を愛せよ
あなたに優しくなれるまで
愛を大事にできるだなんて
微塵も思っちゃいないけど
あなたに優しくなれるまで